- 2010年5月28日 00:21
- 旅日記。
写真は北アイルランドでの写真。
昔、長い旅に出て北アイルランドのportrushと言う町が気に入って約1ヶ月ぐらいアルバイトをして生活していた時のもの。
初めは単純な理由でアイリッシュパブでギネスを飲みたい...。
それからW.Bイエイツの妖精物語に神秘的な空気を感じての旅だったと思う。
全部で約8ヶ月くらいの旅で、北アイルランドは3カ国目くらい。
旅に出ると決めたのは20代後半。「写真を撮って旅をする!」って10代からずっと夢見ていた。
資金も精神力もやっとついたのがそのとき。
あのとき旅に出て本当に良かったと、今でも思う。
当時はユーロもポンドも高くて、まだ旅を続けたいのにどんどんお金がなくなってしまい、働こう!ってひらめいた。
旅を続ける為の知恵で。
その町全部のお店に「働かせてください!」って頼んで回った事を懐かしく思う。
portrushが気に入ったのは海辺の美しい町だったから。
私は海辺で育ったから、やっぱりそう言う町を求めていたのだと思う。
20件目位でようやく働き口が見つかって、優しい人が宿も提供してくれた。
旅に出る前に、地元のインド料理店でバイトしていたのがよかった。
アイルランドなのに初めはインド料理のお店で働いていて、ヒンディー語の「数」がすぐに理解できて気に入られた。「何々ひとつー!とか、ふたつー!」は「エーク、ラガード!ドー,ラガード!!ダンニャワード!」とか。
でもそこは深夜勤務だったので退職。
今度は近くの昼間勤務のカフェで雇われる事に...。
毎日美しい海が見渡せるカフェで、一生懸命に働いていたらだんだん信用されて厨房は私ひとりに任された。そして物価が高い分時給も上がって、少しだけど貯金が出来るほどになった。
そこの料理長が次に何をするのかがすぐに分かって、ひそかに仕込みをしておいたりしたらすごく感動されたり、日本人特有の繊細さで掃除をしていたりしたら思いがけずボーナスを貰えたりした。
片田舎の小さなお店では、多少の間違いは分からない様子で、私の適当な料理はバイトの女の子からも普通になっていった。(私は英語が出来ないのでほぼジェスチャー...。)
「pancake pleaaase!fish and chips pllease!」とか言われて、笑い合いながらの生活が板についた頃、私はふと、「これからどうしたいんだろう?」って疑問を持ってしまった。この気持ちのよい状況から次に進まなきゃって自然と考えていたのだと思う。いつも緩やかな生活から抜け出すのは難しい。
楽だから、そのままでも良かったと思う。でも体と心は次の旅に進んで行くぞって動いていた。どうしてそうなんだか分からない。でもなんか進みたい気持ち
旅の醍醐味はその時の素直な気持ちがダイレクトに感じられること。
五感が鋭くなるような気がするし、時間の感覚が全然違う。
そしてその感覚はずっと体に刻まれて行く様な気がする。
そこで、働き口からの帰り道歩いていて見つめた景色がこの写真。
「SLOW」
そしてゆっくりと振り返ってみたらあった景色。
「1st Ask God」
私にとって写真はこういう事なのです。
わたしはそっとそれを掬い上げたい。
「ゆっくり行けよ、神のみぞ知る」ってことだったのかな。
私にとって旅は作る源。
写真は旅をする事で始まったのではなくて、心の中というか、部屋を撮っていたら外はどうなんだ?と思って自然と外に出てしまって、外に出てみたら流れで海の外にも出てしまって、そこにいる人や風景と関わってしまったという感じ。
そこにどんな意味があるのかは分からないんだけど、それを感じて共鳴してくれる人がいて嬉しい。
私の写真がモノクロなのは、その人の想像する余地があるからかもしれない。
自分だけではない、お互いの色が。