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永井さんは逝ってしまった

永井さん.jpg桜が満開のおだやかな日に美術作家の永井宏さんが逝ってしまった。
まだ59さいだった。

その前日にちょうどsunshine+cloudのカタログが届いていて夜、寝しなにゆっくりと永井さんの文章を読んでいたところだった。
そこには前から話に聞いていた一色海岸書店が本当にオープンするとあり、「いよいよかー、さて遊びに行こう」と思っていた矢先の出来事だった。

いつもここにある文章を楽しみにしていて、洋服や靴などを扱っているカタログなのに、そこにある空気が手に取るように伝わって大好きだった。小さな言葉は私の製作にも確実につながっていた。目の前にある事をゆるやかに大切に過ごして行く感覚というのかな。

もうかれこれ10年以上前に、このカタログで永井さんの文章を読んでいてずっと「こんな素敵な文章を書く人はどんな人だろう?」と夢想していた。きっと素敵な人に違いないと思っていたらなごやかなオジサンで、かなりビックリした事を覚えている。失礼なんだけどピュアなオジサンだった事が新鮮だった。

その頃の私は東京に住んでいて、自分の進むべき道にとても迷っていた。
写真を撮っていても生活は大変で、毎日が「なんで写真を撮っているんだろう?」と、自問自答の日々。ひとつぼ展に入選したときでさえ、不安のかたまりだった。

でも永井さんが海辺の生活から好きな事を文化として発信している事が、当時東京に住んでいた私には本当に気持ちが安らいだ。
「何かを発信していくなら絶対に東京だ」、と思っていた私に永井さんの文章は心動かされるものがあった。「そっか。自分の大事なことはどこにいても出来るんだ」って。

当時、永井さんのワークショップに通ったりして、身近に永井さんに接する事でよりたくさんの大切なものを貰った気がする。「素直に好きな事をするんだよ。毎日を愉快に生きるんだよ。表現する事を続けるんだよ、でも甘えすぎるなよ、そしてロマンティックに生きようよ」って。けっこう厳しい事を言われた覚えもある。でも前に進んでいるような気がした。
その後私は地元の茅ヶ崎に戻り、永井さんにたくさんのつながりを与えてもらって今こうして楽しい事や、嬉しい事をやっと生活の糧に出来た。それでもまだまだやりたい事がたくさんあって、それを永井さんには見て欲しかった。
「まだまだ胸を張って永井さんに見てもらうには恐れ多くて言えないよ」ってずっと思いながら製作を続けて来たけど、永井さんと関わって来た全ての人は永井さんのスピリットを確実に形にしていると思う。いつも遠くから見ていると思えば、身が引き締まる思いがするし、永井さんのように伸びやかに生きようという気もする。

永井さんはみんなのお父さんで、みんなの恋人で、みんなのお兄ちゃんで、みんなの子供で、大好きな先生でもあったのかな。
お通夜に行っても全然現実味がなくて、涙が出なかったのはいつものように永井さんの唄を聴きに行った感覚だったからだと思う。
頭の中でずっと永井さんが歌を唄っていて、みんながそれを聴いているようないつもの風景がそこにはあった。たくさんの人に愛されていた永井さん。これからいろいろな場面で永井さんがいない事を感じて行くんだろう。
永井さんの本「海を眺めていた犬」をまた読み返してみよう。

大好きな人。ありがとういつも。

p.s  永井宏さんのブログ
   sunshine+cloudのHP

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